Q&A
[A.補聴器について]
Q. 補聴器をつけると難聴は進行しますか?(A1)
Q. 補聴器をかけても雑音ばかりが聞こえて役に立たないと言っている人がいますが、本当でしょうか?(A2)
[B.耳鳴について]
Q. ジージーと耳が鳴って夜も眠れません。音はどこから聞こえるのですか?また、どうしたら治りますか?(B1)
[C.急性中耳炎について]
Q. 中耳炎を繰り返していると耳は悪くなりませんか?(C1)
Q. 中耳炎のときにお風呂に入ってもよいのでしょうか?プールに入るのはどうでしょうか?(C2)
Q. 休日や夜間に子どもが急に耳が痛いと泣き出しました。耳鼻咽喉科が見つからない場合どうしたらいいでしょうか?(C3)
[D.耳垢について]
Q. 子どもの耳掃除はどのようにして行えばいいでしょうか?また、取れないときは耳鼻咽喉科で取ってもらえますか?(D1)
[E.鼻出血について]
Q. 鼻血が出たらどうすればいいでしょうか?正しい止血の方法を教えてください?(E1)
[F.鼻づまりについて]
Q. 鼻汁がよく溜まります。なぜでしょうか?どうしたらいいでしょう?(F1)
[G.副鼻腔炎について]
Q. 子どもが副鼻腔炎で長く通院していますが良くなりません。早く治せる方法はないのでしょうか?(G1)
[H.扁桃について]
Q. 学校健診で扁桃肥大といわれたのですが、手術は必要でしょうか?(H1)
[I.食道について]
Q. 魚の骨がひっかかったらどうしたらいいでしょうか?ご飯の丸呑みは有効ですか?(I1)
[J.その他]
Q. 子どもがカゼをひいたときは耳鼻咽喉科か小児科か?(J1)
文献:JOHNS 2002 Vol.18 No3 改変(Journal of Otolaryngology, Head and Neck Surgery)
Q. 補聴器をつけると難聴は進行しますか?(A1)
A 補聴器装用の際に、聴力が悪化することがあります。急激に起こる音響外傷に類似するものと、徐々に進行する騒音性難聴に類似するものです。
つまり、補聴器の増幅度や最大出力音圧レベルを大きく設定していると、必要以上の大きな音が耳にはいって、難聴を進行させる危険があります。
騒音下での使用を制限し、定期的に耳鼻咽喉科専門医による聴力検査と補聴器の調整が必要です。
Q. 補聴器をかけても雑音ばかりが聞こえて役に立たないと言っている人がいますが、本当でしょうか?(A2)
A 残念ですが、確かに補聴器をつけると雑音がうるさくて、とても使えないという人がいます。
でも、補聴器は、うまく調整して上手に使えば、とても役立つものです。最新のデジタル補聴器も雑音抑制機能が付いていますが、効果はまだ不十分です。
難聴になると、音がひずんで聞こえる傾向にありますので、大きくひずんで響く雑音の中に、ことばが隠れてしまうことがあります。まずは、雑音のないところで、ちょっと小さめ音から使い始めてください。補聴器の音に慣れてきたら、徐々に音量を上げ、色々なところで試してください。
雑音といってもさまざまです。食器のぶつかる音や、交差点の車の音、新聞紙の開く音など、うるさく感じる雑音を調べれば、補聴器の調整に役立ちます。
Q. ジージーと耳が鳴って夜も眠れません。音はどこから聞こえるのですか?また、どうしたら治りますか?(B1)
A 外ではなにも音がしていないのに、耳の中でジージーといった雑音が聞こえることを耳鳴りと呼びます。耳鳴りはごくありふれた症状で、誰でも疲れた時などに出ますが、すぐ消えてしまうものは病的なものではありません。
しかし、絶え間なく聞こえ、夜も眠れず、仕事も手に付かないなどの日常生活に支障をきたす場合に問題になります。
ほとんどの耳鳴りは何らかの難聴に伴って発生します。耳鳴りの治療法もその原因となっている難聴によって異なりますので、はじめに難聴がどのような病気によっておこっているのかを調べて、その難聴に対する治療を行う必要があります。
大半の耳鳴りは心配するものではありません。耳鳴りそのものは生命に危険はないのです。しかし、だんだん大きくなる耳鳴りは検査を受けたほうが無難です。
突発性難聴やメニエール病では、ある日突然難聴、めまいとともに耳鳴りを感じます。早く治療しないと、治らなくなりますので専門医の診断を受ける必要があります。最も心配な耳鳴りは脳腫瘍のひとつである聴神経腫瘍による耳鳴りです。一側の難聴や耳鳴りで発症し、徐々に進行します。
生命に別状のない耳鳴りであっても本人にとっては耐え難い苦痛となることがあります。
いったん耳鳴りを感じると耳鳴りによる不安がさらに新たなストレスとなり、耳鳴りがだんだん大きく感じるようになり、さらに不安が増大するといった悪循環が生じます。このような場合は心身のストレスを解消することによって悪循環を断つ必要があります。
Q. 中耳炎を繰り返していると耳は悪くなりませんか?(C1)
A 中耳炎というのは、耳の鼓膜の奥の中耳腔という空洞に上咽頭(鼻の奥)から細菌やウイルスが感染して起こる病気です。
中耳腔に膿汁が貯留したり、滲出性中耳炎に移行したときに、音の伝わりが悪くなり伝音性難聴が引き起こされます。この難聴は、急性中耳炎が完治することで改善されることがほとんどです。
しかし、鼓膜に穴が残存する場合は軽度の伝音性難聴が生じます。
しかし、これも鼓膜穿孔閉鎖術で改善します。たまに、成人の場合、急性中耳炎から内耳炎になり、感音性難聴を生じることがありますが、小児の場合は、一般的に、急性中耳炎を繰り返しても、その都度、治療すれば難聴を生ずることはほとんどありません。
Q. 中耳炎のときにお風呂に入ってもよいのでしょうか?プールに入るのはどうでしょうか?(C2)
A お風呂は2~3日は避けたほうがよいでしょう。
体が温まるような行動(入浴、激しい運動、飲酒など)は急性期症状を増悪させるからです。
急性中耳炎が完全に治るまでの経過は、3週間くらいかかることは珍しいことではありません。その間ずっと入浴禁止というわけではありません。2~3日して急性期症状が落ち着いたら入浴は可能です。
シャンプーは、鼓膜に穴が開いてない限りは差し支えないでしょう。耳だれがあるうちは洗髪は控えたほうがよいでしょう。
プールに入ることは勧められません。鼓膜に穴が開いてない中耳炎でも、プールはやめるべきです。水泳で息継ぎのときに、プールの水が咽頭、鼻にはいり、中耳炎の治りを遅くします。
Q. 休日や夜間に子どもが急に耳が痛いと泣き出しました。耳鼻咽喉科が見つからない場合どうしたらいいでしょうか?(C3)
A 子どもが急に耳が痛いと泣き出す原因では急性中耳炎が最も頻度が高いでしょう。
また、外耳炎や耳下腺の炎症でも耳が痛くなります。まずは痛みを取り除いてあげなくてはなりません。そのためには、鎮痛薬を使います。
解熱薬として座薬や飲み薬の常備薬はありますか?解熱剤は、鎮痛作用も持っていますので必要最低限を使用してください。急性中耳炎では、急性炎症の初期で鼓膜が腫れ上がるまでが特に激しい痛みを訴えます。
多くの場合、1回ないし2回の使用で効果は十分であると思います。お子さんに激しい耳痛を訴えられますと心配になると思いますが、耳鼻咽喉科への受診はその翌日で治療上問題はありません。夜間には痛みを取ってあげれば十分ですのでご心配なく。
Q. 子どもの耳掃除はどのようにして行えばいいでしょうか?また、取れないときは耳鼻咽喉科で取ってもらえますか?(D1)
A 子どもの耳あかは、一般的に溜まりやすい傾向にあります。簡単な耳あかの場合は、お母さんの膝を枕にして、綿棒でそっと除去できますが、少し固まると耳掻きを使います。その際、周辺にどなたもおられないことを確認いたします。
よく、耳掃除をして、後から他の子どもが母親に甘えて来られ、耳掻きによる鼓膜への損傷が経験されるからです。また、電話などで驚いたりすることがありますので気をつけなければなりません。やはり、奥のほうの耳掃除は危険ですのでやめたほうがいいでしょう。
耳あかには、乾燥しているものとアメミミと言われる湿ったものがあり、また、固まった取りにくい耳あかもありますので、耳鼻咽喉科で取ってもらうほうが安全だと思います。当院では、耳あかを溶かす薬を使用して吸引、洗浄して顕微鏡で見ながら取ります。
Q. 鼻血が出たらどうすればいいでしょうか?正しい止血の方法を教えてください?(E1)
A 子どもの場合、鼻血は鼻を左右に分ける鼻中隔という真ん中の壁における両側の粘膜で、鼻の入り口から約1cmのところから出ているのがほとんどです。
鼻血が出たらこの部位を圧迫すべく鼻翼(小鼻)を、鼻をつまむ要領でつよく抑えてください。仰向けに寝ると血液がのどの方に回ってくるので椅子に座るか、横向きに寝かせるかとにかく安静にして楽な姿勢で顔を少し下向きして圧迫してください。時間は5~10分ぐらいです。
たいていの鼻血はこれで止まります。頸の後を叩いたり、鼻の上方で骨の部分をつまんだりしないようにしてください。以上の処置でも止まらない場合には耳鼻咽喉科医の診察を受けてください。できるだけ血液を飲み込まないようにしましょう。
顔を少し下向きにして鼻からの血液をタオルなどでぬぐい、のどにたまった血液は飲み込まず、軽く吐き出すようにしてください。
当院では、鼻粘膜に露出している血管の出血部位を麻酔した上で電気凝固にて止血しております。
Q. 鼻汁がよく溜まります。なぜでしょうか?どうしたらいいでしょう?(F1)
A 鼻汁は鼻の粘膜に潤いをもたらし、また鼻に入った異物を取り除くため鼻腔や副鼻腔から分泌されるもので、その量は体調や周囲の環境によっても変化します。
分泌された鼻汁は鼻の粘膜にある小さな線毛の働きによってのどへと流されますが、正常な状態ではこれに気づくことはありません。しかし、その分泌される量が過度に多くなったり、粘り気が強くなったり、あるいはアデノイドが鼻汁の流れを妨げたりすると鼻に溜まり、さらにその量が増えると鼻からあふれ、ときに鼻の後へ流れる感じを自覚することがあります。
鼻汁の量が多くなる原因となる疾患を見つけるために鼻や咽頭の観察、アレルギー検査、レントゲン検査、鼻汁細胞検査などを行い、適切な治療を行うことが重要です。
溜まった鼻汁をそのままにしておくと、子どもは鼻をすすり、これが中耳炎の原因となることがあるため、鼻をかませ、鼻汁をとってあげることが大切です。鼻をかませる時は、必ず片方ずつ静かにかませます。
当院では、子どもでも痛がらずに鼻汁を吸引洗浄する治療を積極的にしております。
Q. 子どもが副鼻腔炎で長く通院していますが良くなりません。早く治せる方法はないのでしょうか?(G1)
A 鼻は 鼻腔とそれを取りまく空洞である副鼻腔より構成されています。鼻腔と副鼻腔は自然口という小さな穴で交通しております。
一般に子どもの副鼻腔炎は成人より治りやすく、治りにくい場合は、いくつかの原因が考えられます。正しく診断するために、鼻内を細いファイバーで観察したり、鼻汁の細菌培養検査、薬物感受性検査、副鼻腔レントゲン、アレルギー検査などをする必要があります。
副鼻腔炎の治療の基本は鼻の通りを良くさせて副鼻腔に溜まった汚い鼻汁を自然口から排泄させることです。それには鼻内の鼻汁を吸引したり、洗浄したり、鼻をよくかませることが大切です。
アデノイド肥大やアレルギー性鼻炎が併発して、治りにくい例もありますので、適切に治療する必要があります。当院では副鼻腔吸引、洗浄を積極的にした上で1~3ヶ月間のマクロライド系抗菌剤投与をしています。
手術治療は、3ヶ月の薬で改善しなかった人に内視鏡を用いて副鼻腔の自然口を開放する手術をしますが、副鼻腔の発育が完成した13歳以上が対象になります。
Q. 学校健診で扁桃肥大といわれたのですが、手術は必要でしょうか?(H1)
A 扁桃肥大という場合は、一般的にはノドの奥に左右一対ある口蓋扁桃のことを指しますが、扁桃組織にはその他に、咽頭扁桃(アデノイド)、舌根扁桃、耳管扁桃などがあります。これらはノドの入り口を取り囲むように配列し、鼻やノドを通って外界から侵入する細菌やウイルスから生体を防御する役割を果たしています。
特に幼児期から16~19歳頃までは扁桃組織の活動が盛んであるため、この時期には通常でも肥大する傾向にあります。扁桃肥大がこうした生理的肥大で特別症状を伴うものでなければ治療の必要はありません。
一方、繰り返す炎症などによって扁桃肥大が高度となり、呼吸や嚥下・摂食に障害を生ずるような場合には扁桃摘出術の適応となります。呼吸障害では、肥大した扁桃によって気道が狭くなり、睡眠時の強いいびきと一時的な呼吸停止を伴う無呼吸発作と呼ばれる状態が長期に渡ると、心臓や肺の機能を障害する危険すらあります。
また、嚥下・摂食障害では、食べ物を飲み込みにくく食事に時間がかかる、体重が増えないなどお精神身体の発育、成長に影響を及ぼします。
なお、小学校低学年頃までは扁桃肥大とともにアデノイドも肥大していることが多く、また、アデノイドの肥大が鼻閉などの呼吸障害のみならず、鼻副鼻腔炎や中耳炎の原因になる場合も少なくありません。このためにこの年代では扁桃摘出術とともにアデノイド切除が必要となることも多いのが実情です。
Q. 魚の骨がひっかかったらどうしたらいいでしょうか?ご飯の丸呑みは有効ですか?(I1)
A 魚の骨はアジやウナギなどの細いものは、扁桃などの小さな穴に入り込むこのがあります。また、サケやブリなどの比較的大きな骨や鰓骨などの扁平骨は食道の入り口に引っかかることが多いです。
扁桃などに引っかかったときは、引っかかった側の顎の下が痛くなります。一方、食道の入り口に引っかかった骨の場合は、喉仏を指で摘み、左右に動かしたとき“ちくり”と痛みが走る時は骨が刺さっている証拠です。
扁桃に引っかかった小さな骨は、扁桃の穴からすこし頭を出していることが多いので、ご飯を丸呑みすると、その頭が引っかかって骨が抜けることがありますが、食道の入り口に刺さった大きな骨は、ご飯などを呑み込むことによりかえって骨を食道深く差し込む結果となり、危険です。下のほうに刺さった骨は耳鼻咽喉科医に相談いたしましょう。
Q. 子どもがよくカゼをひくのですか?原因はあるのでしょうか?(J1)
子どもがカゼをひいたと考えた場合に耳鼻咽喉科を受診すべきか小児科を受診すべきかという質問ですが、一応症状で分けて考えていくことにします。
なお何か疾患があり耳鼻咽喉科医なり小児科医なりをかかりつけ医としている子の場合には、その医師を受診していただければいいと思います。
1)39℃をこえるような発熱のある場合で比較的元気で咳のない場合には咽頭、扁桃の炎症が主に考えられます。ときに中耳炎をおこしていることもありますので耳鼻咽喉科のほうがよいと思います。
咳がなくてもぐったりしている場合や咳がひどい場合には、髄膜炎や気管支炎、肺炎などをおこしている場合がありますので、まずは小児科の方がよいと思われます。
2)発熱はないが咳がひどい場合は気管支炎や肺炎、またかなりの頻度で気管支喘息ということがありますので、まずは小児科の方がよいと思われます。
ただし、小児科で治療をうけても改善しない場合には蓄膿症(副鼻腔炎)のために鼻漏がのどにおちて咳を誘発している場合がありますので耳鼻咽喉科を受診してください。
3)発熱、咳が軽度の場合鼻水のある、なしにかかわらず耳鼻咽喉科の方がよいと思われます。特に鼻水のひどい場合には乳幼児では呼吸や哺乳がつらそうになりますので、耳鼻咽喉科で鼻の吸引処置などをしてもらうと楽になることが多いようです。小児科で治療をうけていても処置のために耳鼻咽喉科を受診することは可能です。
4)下痢、吐き気などの消火器症状がある場合小児科の方が適当です。
Q. 耳鼻咽喉科の通院はなぜ長くなるのでしょうか?(J2)
耳鼻咽喉科領域の病気は慢性的なものが多いのです。
たとえば、“鼻が悪い”という場合、アレルギー性鼻炎や鼻副鼻腔炎があります。両方とも長くかかってしまいます。アレルギー性鼻炎の場合、自然治癒する例もありますし、海外への転居など環境をかえると発症しなくなることもあります。
でも、子どもは成長発育が著しい時期、アレルギー反応も活発になってアレルギーの症状がはっきりとあらわれてしまうことが多いのです。
人生これからという時期に症状がでてくるのですから、なるべく症状を軽くおさえ、お子さんにあった治療をみつけ、自分である程度のコントロールができるようになるまで気長に治療を続けていきたいですね。
鼻副鼻腔炎の場合は、昔は“蓄膿症”といいましたが、今は、細菌感染とアレルギーが共存しているお子さんも多く、以前とは様態が違ってきています。
細菌感染によるモ蓄膿症“は抗生物質と排膿(鼻をきれいにとる)でかなり改善します。でも、アレルギーがからんでいると単純に抗生物質だけというわけにはいかないのです。鼻の処置は膿性の鼻汁などを吸引して鼻をきれいにして、空気の通りをよくします。空気がよく通るようになることで鼻の症状も病態もよくなりますから、鼻の処置は続けましょう。
耳の場合、中耳炎、滲出性中耳炎があります。急性中耳炎は長くても2週間で治りますが、“何度もなる” “治ったと思ったらすぐ再発する”場合は、滲出性中耳炎がベースにある子どもが多いです。
中耳炎が治ったと思ってから、普通のときに一度みせてくださいね。滲出性中耳炎は自然に治る場合もありますが、長くかかるお子さんもいます。子どものみみ・はなの構造上、大人とは違った特徴があるので仕方のないこともあります。あまり長引くときは鼓膜チューブを置く方法もありますから、それも考えてみましょう。